前回、カンボジアンタイガーFCのスタッフ紹介と学校訪問編を書いた結果、多くの人に読んでいただき、大変感謝しております。
当ブログをきっかけにカンボジアンタイガーFCのみならず、カンボジアという国や東南アジアのサッカーについてより興味を持ってもらえる人が増えることを考えながらこれからも書いていこうと思います。
今回は、先日行われたトレーニングマッチ2試合の様子を紹介します。
カンボジアにやってきてから3日が経った。
6月18日は、タイガーFC対プノンペンクラウンFCのトレーニングマッチ。
僕がカンボジアに来たもうひとつの目的が、この試合のハーフタイムイベントにピンで出演すること。 ※一つ目の目的はカンボジア代表戦
今回、僕は日本からバンコク、そしてプノンペンと全てエアアジア(LCC)を予約していた。
預け荷物は有料のため、持ち物は機内預け荷物の小さなバックパック一つに抑えた。
そして、その中に大きな新ピンを無理矢理詰め込んだ。
僕が最も不安だったのが飛行機のチェックインの時だ。
既にバックパックは危険を察知した時のフグのように膨れ上がっており、機内持ち込み荷物の大きさギリギリだ。
僕は係員に呼び止められないかビクビクしながらチェックインの列に並んだ。
できるだけ彼女の視線をバックパックに向けさせないように終始満面の笑みの状態を保ちながら彼女を見つめ続けた。
「追加料金を取られるくらいなら変な客だと思われたっていい」
そう思うほど、僕は必死だった。
旅する中でこのチェックインする時ほど、記憶に残らない時間はない。
だが、この時ばかりは係員の一つ一つの動きまで鮮明に憶えており、彼女の動作がやけに遅く感じた。
幸いにも飛行機が遅れていたこともあり、僕の全身全霊をかけたチェックインはすんなりと終了した。
僕はピンをなんとかプノンペンまで運ぶことに成功した。
そして、このピンをタイガーFC仕様にしなくてはならない。
発展途上国の主要都市に行くと、たいてい「ここに行けば何でも揃う」と言われている市場がある。
プノンペンでは、オルセーマーケットがそれに該当する。
とりあえず、行ってみることになった。
砂埃が立つ中、無数の泥だらけのトラックが停車している。
建物の中から次から次へと現れる半裸の男たちがリヤカーいっぱいの荷物をトラックに積んで運んでいく。
そう、これこそが僕が昔、カンボジアで見た光景だ。
ちなみにこのマーケットの向かいにはバックパッカーの間で有名なあの「キャピトル」というゲストハウスがある。
10年前に初めてプノンペンを訪れた時のことを思い出した。
当時、タイからシェムリアップに入った僕は、道中一緒だった女の子と恋に落ち、帰りの飛行機のチケットを破り捨て、勢いでプノンペンまでやってきた。
今思えば大胆なことをしたなと思うが、あの時はそれだけ真剣だったのだ。
もちろん、プノンペンには元々行く予定でなかったのでガイドブックも持っておらず、どこに何があるのか全く検討もつかなかった。
唯一、シェムリアップのゲストハウスで聞いたこの「キャピトル」の名前を頼りに何とかここまでたどり着いた。
そんな記憶を思い出しながらマーケットの中を進んでいく。
カビのような臭いが鼻をつく。
このなんともいえない臭いのおかげで懐かしい気持ちになり、当時の記憶がより鮮明に蘇ってきた。
人ひとりが通るにもやっとの道をリヤカーが通る度に両脇にあるお店にお邪魔し、そこで会話が生まれる。
もちろん、外国人観光客はほとんどいない。
どうやら、入口付近はiPhoneはじめ、電化製品が多いようだ。
中には売り物なのか、ゴミなのか区別がつかないものもたくさんあり、明らかに売れないと思われるものが山積みになっているお店もあった。
そのお店の店員さんのことを思うと気の毒に思えてくる。
この中を吉田GMを先頭に奥へと進んでいく。
彼は何度も訪れているのでこの巨大な迷路のような場所のどこに何が売っているのかがわかるようだ。
全く迷わずにペンキ屋さんに到着。無事にオレンジ色のペンキを購入できた。
周辺のお店でその他必要なものを購入し、再び電化製品コーナーを通ると1人のおばちゃんに話しかけられた。
以前、ここでダンボールをもらいにきた時に大げんかになった以来、話すようになったようだ。
おばちゃんにタイガーFCの紹介をし、クラブのロゴのステッカーを貼らせてもらえることになった。
カンボジア人は基本的にシャイだが、こういった些細な会話からすぐに仲良くなることがよくある。
そして、ここに来ると日本の昭和のようなノスタルジーな気分になれる。
数日後、再びお店を訪れてみるとガラスケースに貼ったはずのステッカーは、足元に無造作に積んであったダンボールの端に申し訳なさそうに貼られていた。
だが、おばちゃんはそんなことは全く気にせず、笑顔でセールストークをしてくる。
カンボジアでは何が起きても「めげない、落ち込まない」、僕は自分にそう言い聞かせることにした。
事務所に戻った僕らは、ピンをオレンジ色に塗り始めた。
これが意外にも面白い。
小学校の頃の図工の授業のようにいざ、やりはじめたら止まらなくなる。
ある程度塗り終わり、外の木に干して乾かしていると、練習後のカンボジア人選手がやってきて丁寧に塗ってくれた。
彼の着ていたTシャツには「paint !!」と大きなペンキの缶が描かれたいた。
きっと、実家がペンキ屋さんだったに違いない。
そして、トレーニングマッチ当日を迎えた。
会場はタイガーFCのホーム・ウエスタンスタジアム。
写真だけを見ると、きれいな人工芝でこじんまりとしていいスタジアムに見えるが、実はまだ工事中なのだ。
ここはVIPルームとなるはずの場所。
この時点で開幕まであと2週間。
どう考えても完成する姿が想像できない。
このようにカンボジアで生活していると、次々と信じられないようなことが起こる。
事務所からスタジアムまでは毎回、トゥクトゥクで荷物を運ぶ。
ステッカーを貼り、もう完全にタイガーFC仕様のトゥクトゥクに変身。
この日の対戦相手は昨年の王者であるプノンペン・クラウンFC。(母体は高級ホテルなど経営している会社)
カンボジア版レアルマドリードといったところか。
昨オフに代表キャプテンなど主力数人が退団し、戦力低下かと思われたが、そこはカンボジア一の金満クラブで、すぐにお金をかけて大量補強し、昨年並の戦力は整った。
海外では普通だが、カンボジア国内ではあまり見ることがないチームバスを所有していることからもわかるとおり、その資金は潤沢にある。何でも金で物を言わすこのクラブを倒すことを他のクラブは目標にしている。
このウエスタンスタジアムだが、実は工事中の他にも欠点があった。
それは、入口がスタンドのアウェイチーム側のコーナーからの1箇所しかないこと。
そうすると、スタジアムに入ってきた観客は皆、自然とアウェイ寄りのスタンドに座ってしまう。
この写真にもわかるとおり、手前がホーム側はがらがら、奥のほうのアウェイ側に人がたくさんいるのがわかる。
たしかにクラウンは人気チームなのでサポーターは多い。
がしかし、去年までのカンボジアリーグではホーム&アウェイの文化がなかったので、観客はただサッカーが好きで観に来ている人が大半だ。
その彼ら全員がアウェイ側に座ってしまったことで、ホーム側がかなり貧相になってしまった。
しかし、手招きをするなど必死の抵抗をした結果、2~30人ほどだがホーム側に観客が来てくれた。
なかには先日行った日本語学科の生徒たちもいて、彼らの顔を見つけた瞬間、本当に嬉しかった。
そして、選手たちがウォーミングアップを終了し、いよいよキックオフ!という時、事件が起きた。
なんと、審判団が1人しかいない。
普通は、主審1人に加え、線審2人と控えの審判1人の合計4人いる。
この日はトレーニングマッチなので控えの審判はいないが、さすがに1人だけでは試合が行うことができない。
両チームに責められ、遠い目をする審判。 ※彼は遅刻しないで来たのでそんなに悪くはない。
遅れること15分、ようやく残りの2人の審判が現れ、結局30分遅れでキックオフ。
何が起こるかわからないのがカンボジア。
恐るべし!
初めて観るオレンジのユニフォームをまとい、敵と戦うタイガーFCの選手たちの姿を見た瞬間、感慨深かった。
吉田GMが1月にクラブ存続を求めて動き出してから半年。
これまでのことが次々と脳裏に蘇り、目頭が熱くなった。
前半はスコアレスで終了。
ハーフタイムになり、いよいよ僕の出番がやってきた。
今回のイベントは、本番のリーグ戦に向けての練習という意味合いのイベント。
ピッチの脇にあった少し小さめのゴールを持ってきて、「ピンと観客のPK対決」をすることになった。
やるからにはしっかり盛り上げたいと強く思っていた。
ただ、このスタジアムにはまだ音響設備も何もない。
試合中、ホーム側にいた観客一人一人に説明してまわった。
結果、賞品のポロシャツとボールが目当てで、10人ほど参加してくれることになった。
ピンを着た瞬間からその場にいた観客の注目は僕に集中した。
これはいけると思い、観客をあおるものの、特に歓声も上がらず、誰も乗ってこない。
その後の僕は、ただ次々と飛んでくるシュートに対して飛びつく、ただの「ちょっと変わったゴールキーパー」でしかなかった。
いいところは何もなく、終わってしまったピン。
しかしその後、どこからともなく3人の子供現れ、彼らの遊び相手となることで最低限の役目は果たすことができたと自分に言い聞かせた。
なお、試合は0-1でクラウンが勝利した。
僕自身、初めて対外試合を経験したことでいくつか課題を見つけることができた。
21日に行われるナーガ戦では今回の課題を検証し、お客さんにより楽しんでもらえるような環境つくりをしようと心に誓った。
そして、次のトレーニングマッチの当日を迎えた。
この日も3日前と同じ午後3時半キックオフ。
ひとつ違うのが前回の試合は平日開催だったが、今回は日曜日だ。
相手も古豪ナーガFCなので、お客さんの入りもそこそこ期待できるはず。
3日ぶりにスタジアムへ行くと建物に硝子が入っており、少しずつではあるが、だいぶ「VIPルームぽく」なっていた。
しかし、その他はこのような感じで働く気はほぼないに等しい。これでは絶対、開幕戦までに間に合わない。
今回は入口とホーム側にクラブのフラッグを設置。
これが目印になり、学校やフットサル場で声をかけた人たちがホーム側(写真奥側)に来てくれた。
そして、スタジアムの外に行き、一人一人に話しかけて、ホーム側に誘導することにした。
中には、サッカーの試合が見たいというよりはタイガーFCの試合が見たくて来てくれた人もいて、観客とコミュニケーションを取れるいい機会となった。
ちなみにこれがこの日のスタジアムグルメのサトウキビジュース(約30円)。味は思っていたほど不味くはなかった。スタジアムに来たらぜひ、挑戦してみることをおすすめする。
なお、この日の審判団は3人ともしっかり遅刻せずに来て、ボールを蹴っていた。
だが、試合前に審判がボールで遊んでいる姿を見たのはこの時が初めてだ。
そして、6月21日午後3時半 キックオフ
カンボジアンタイガーFC対ナーガFC
前回と違ってこの日はそれなりに集中して試合を見ることができた。
特に木原選手兼監督の蹴ったCKからFW吉原選手のヘディングが決まった瞬間、スタンドの盛り上がりは最骨頂だった。
僕だけでなく、まわりの来てくれた観客みんなが立ち上がり、歓喜の選手たちに声援を送った。
自分のクラブがゴールするとこんなにも嬉しいものなのか、横で吉田GMや翔吾くんが本当に嬉しそうな表情をしているのを見て、僕はもっと幸せな気持ちになることができた。
この日は前回の3倍ほどの観客が集まった。
最初は静かだった観客席だったが、いいプレーが出ると徐々に歓声が沸きはじめ、雰囲気もだいぶサッカースタジアムっぽくなった。
そして、ハーフタイム、今回は観客にクラブカラーであるオレンジの紙を配り、タイガーFCにメッセージを書いてもらい、写真を撮った。これをFacebookのページにアップすることで情報を得てもらい、またスタジアムに観に来てもらえる。
行なう前はシャイなカンボジア人に大丈夫かなと思っていたが、予想以上の多くの人に書いてもらうことができた。
なお、このオレンジの紙は今も事務所の壁に大切に飾ってある。
試合は終盤に追いつかれ、1-1の引き分け、またしても初勝利はならなかった。
僕達も悔しいのだから選手たちはもっと悔しいに違いない。
この悔しさをリーグ戦にぶつけよう。
ちなみに僕ら日本人には考えられないかもしれないが、カンボジアの観客は試合後、スタンドにゴミを置きっぱなしですぐに帰ってしまう。
そんなゴミをひとつ残らずに集めて捨てるのも僕達の仕事のひとつである。
ほとんどの選手が帰った後のスタンドには、試合に出て相当疲れているはずなのに一生懸命、ゴミを拾っている木原監督の姿があった。
実はこういった目に見えないところでの作業が非常に多い。
僕は彼がチームのために協力している姿に心を打たれた。
そして本日、2015年の「メトフォンカンボジアリーグ」が開幕した。
僕達タイガーFCの開幕戦は明日。
相手はナショナル・ポリスというクラブだ。
スタジアムをにはこれまでのカンボジアリーグにはなかった新しい付加価値をつけたい。
そして、スタジアムに来てくれた観客に「来てよかった」、「また来たい」と言ってもらえるような空間を提供するためにしっかり準備をしたいと思います。
タイガーFCの試合を通して一人でも多くの人を笑顔にできたら最高です!
それでは明日、スタジアムで会いましょう!
試合詳細
↓
Facebook カンボジアンタイガーFC公式ページ
当ブログをきっかけにカンボジアンタイガーFCのみならず、カンボジアという国や東南アジアのサッカーについてより興味を持ってもらえる人が増えることを考えながらこれからも書いていこうと思います。
今回は、先日行われたトレーニングマッチ2試合の様子を紹介します。
カンボジアにやってきてから3日が経った。
6月18日は、タイガーFC対プノンペンクラウンFCのトレーニングマッチ。
僕がカンボジアに来たもうひとつの目的が、この試合のハーフタイムイベントにピンで出演すること。 ※一つ目の目的はカンボジア代表戦
今回、僕は日本からバンコク、そしてプノンペンと全てエアアジア(LCC)を予約していた。
預け荷物は有料のため、持ち物は機内預け荷物の小さなバックパック一つに抑えた。
そして、その中に大きな新ピンを無理矢理詰め込んだ。
僕が最も不安だったのが飛行機のチェックインの時だ。
既にバックパックは危険を察知した時のフグのように膨れ上がっており、機内持ち込み荷物の大きさギリギリだ。
僕は係員に呼び止められないかビクビクしながらチェックインの列に並んだ。
できるだけ彼女の視線をバックパックに向けさせないように終始満面の笑みの状態を保ちながら彼女を見つめ続けた。
「追加料金を取られるくらいなら変な客だと思われたっていい」
そう思うほど、僕は必死だった。
旅する中でこのチェックインする時ほど、記憶に残らない時間はない。
だが、この時ばかりは係員の一つ一つの動きまで鮮明に憶えており、彼女の動作がやけに遅く感じた。
幸いにも飛行機が遅れていたこともあり、僕の全身全霊をかけたチェックインはすんなりと終了した。
僕はピンをなんとかプノンペンまで運ぶことに成功した。
そして、このピンをタイガーFC仕様にしなくてはならない。
発展途上国の主要都市に行くと、たいてい「ここに行けば何でも揃う」と言われている市場がある。
プノンペンでは、オルセーマーケットがそれに該当する。
とりあえず、行ってみることになった。
砂埃が立つ中、無数の泥だらけのトラックが停車している。
建物の中から次から次へと現れる半裸の男たちがリヤカーいっぱいの荷物をトラックに積んで運んでいく。
そう、これこそが僕が昔、カンボジアで見た光景だ。
ちなみにこのマーケットの向かいにはバックパッカーの間で有名なあの「キャピトル」というゲストハウスがある。
10年前に初めてプノンペンを訪れた時のことを思い出した。
当時、タイからシェムリアップに入った僕は、道中一緒だった女の子と恋に落ち、帰りの飛行機のチケットを破り捨て、勢いでプノンペンまでやってきた。
今思えば大胆なことをしたなと思うが、あの時はそれだけ真剣だったのだ。
もちろん、プノンペンには元々行く予定でなかったのでガイドブックも持っておらず、どこに何があるのか全く検討もつかなかった。
唯一、シェムリアップのゲストハウスで聞いたこの「キャピトル」の名前を頼りに何とかここまでたどり着いた。
そんな記憶を思い出しながらマーケットの中を進んでいく。
カビのような臭いが鼻をつく。
このなんともいえない臭いのおかげで懐かしい気持ちになり、当時の記憶がより鮮明に蘇ってきた。
人ひとりが通るにもやっとの道をリヤカーが通る度に両脇にあるお店にお邪魔し、そこで会話が生まれる。
もちろん、外国人観光客はほとんどいない。
どうやら、入口付近はiPhoneはじめ、電化製品が多いようだ。
中には売り物なのか、ゴミなのか区別がつかないものもたくさんあり、明らかに売れないと思われるものが山積みになっているお店もあった。
そのお店の店員さんのことを思うと気の毒に思えてくる。
この中を吉田GMを先頭に奥へと進んでいく。
彼は何度も訪れているのでこの巨大な迷路のような場所のどこに何が売っているのかがわかるようだ。
全く迷わずにペンキ屋さんに到着。無事にオレンジ色のペンキを購入できた。
周辺のお店でその他必要なものを購入し、再び電化製品コーナーを通ると1人のおばちゃんに話しかけられた。
以前、ここでダンボールをもらいにきた時に大げんかになった以来、話すようになったようだ。
おばちゃんにタイガーFCの紹介をし、クラブのロゴのステッカーを貼らせてもらえることになった。
カンボジア人は基本的にシャイだが、こういった些細な会話からすぐに仲良くなることがよくある。
そして、ここに来ると日本の昭和のようなノスタルジーな気分になれる。
数日後、再びお店を訪れてみるとガラスケースに貼ったはずのステッカーは、足元に無造作に積んであったダンボールの端に申し訳なさそうに貼られていた。
だが、おばちゃんはそんなことは全く気にせず、笑顔でセールストークをしてくる。
カンボジアでは何が起きても「めげない、落ち込まない」、僕は自分にそう言い聞かせることにした。
事務所に戻った僕らは、ピンをオレンジ色に塗り始めた。
これが意外にも面白い。
小学校の頃の図工の授業のようにいざ、やりはじめたら止まらなくなる。
ある程度塗り終わり、外の木に干して乾かしていると、練習後のカンボジア人選手がやってきて丁寧に塗ってくれた。
彼の着ていたTシャツには「paint !!」と大きなペンキの缶が描かれたいた。
きっと、実家がペンキ屋さんだったに違いない。
そして、トレーニングマッチ当日を迎えた。
会場はタイガーFCのホーム・ウエスタンスタジアム。
写真だけを見ると、きれいな人工芝でこじんまりとしていいスタジアムに見えるが、実はまだ工事中なのだ。
ここはVIPルームとなるはずの場所。
この時点で開幕まであと2週間。
どう考えても完成する姿が想像できない。
このようにカンボジアで生活していると、次々と信じられないようなことが起こる。
事務所からスタジアムまでは毎回、トゥクトゥクで荷物を運ぶ。
ステッカーを貼り、もう完全にタイガーFC仕様のトゥクトゥクに変身。
この日の対戦相手は昨年の王者であるプノンペン・クラウンFC。(母体は高級ホテルなど経営している会社)
カンボジア版レアルマドリードといったところか。
昨オフに代表キャプテンなど主力数人が退団し、戦力低下かと思われたが、そこはカンボジア一の金満クラブで、すぐにお金をかけて大量補強し、昨年並の戦力は整った。
海外では普通だが、カンボジア国内ではあまり見ることがないチームバスを所有していることからもわかるとおり、その資金は潤沢にある。何でも金で物を言わすこのクラブを倒すことを他のクラブは目標にしている。
このウエスタンスタジアムだが、実は工事中の他にも欠点があった。
それは、入口がスタンドのアウェイチーム側のコーナーからの1箇所しかないこと。
そうすると、スタジアムに入ってきた観客は皆、自然とアウェイ寄りのスタンドに座ってしまう。
この写真にもわかるとおり、手前がホーム側はがらがら、奥のほうのアウェイ側に人がたくさんいるのがわかる。
たしかにクラウンは人気チームなのでサポーターは多い。
がしかし、去年までのカンボジアリーグではホーム&アウェイの文化がなかったので、観客はただサッカーが好きで観に来ている人が大半だ。
その彼ら全員がアウェイ側に座ってしまったことで、ホーム側がかなり貧相になってしまった。
しかし、手招きをするなど必死の抵抗をした結果、2~30人ほどだがホーム側に観客が来てくれた。
なかには先日行った日本語学科の生徒たちもいて、彼らの顔を見つけた瞬間、本当に嬉しかった。
そして、選手たちがウォーミングアップを終了し、いよいよキックオフ!という時、事件が起きた。
なんと、審判団が1人しかいない。
普通は、主審1人に加え、線審2人と控えの審判1人の合計4人いる。
この日はトレーニングマッチなので控えの審判はいないが、さすがに1人だけでは試合が行うことができない。
両チームに責められ、遠い目をする審判。 ※彼は遅刻しないで来たのでそんなに悪くはない。
遅れること15分、ようやく残りの2人の審判が現れ、結局30分遅れでキックオフ。
何が起こるかわからないのがカンボジア。
恐るべし!
初めて観るオレンジのユニフォームをまとい、敵と戦うタイガーFCの選手たちの姿を見た瞬間、感慨深かった。
吉田GMが1月にクラブ存続を求めて動き出してから半年。
これまでのことが次々と脳裏に蘇り、目頭が熱くなった。
前半はスコアレスで終了。
ハーフタイムになり、いよいよ僕の出番がやってきた。
今回のイベントは、本番のリーグ戦に向けての練習という意味合いのイベント。
ピッチの脇にあった少し小さめのゴールを持ってきて、「ピンと観客のPK対決」をすることになった。
やるからにはしっかり盛り上げたいと強く思っていた。
ただ、このスタジアムにはまだ音響設備も何もない。
試合中、ホーム側にいた観客一人一人に説明してまわった。
結果、賞品のポロシャツとボールが目当てで、10人ほど参加してくれることになった。
ピンを着た瞬間からその場にいた観客の注目は僕に集中した。
これはいけると思い、観客をあおるものの、特に歓声も上がらず、誰も乗ってこない。
その後の僕は、ただ次々と飛んでくるシュートに対して飛びつく、ただの「ちょっと変わったゴールキーパー」でしかなかった。
いいところは何もなく、終わってしまったピン。
しかしその後、どこからともなく3人の子供現れ、彼らの遊び相手となることで最低限の役目は果たすことができたと自分に言い聞かせた。
なお、試合は0-1でクラウンが勝利した。
僕自身、初めて対外試合を経験したことでいくつか課題を見つけることができた。
21日に行われるナーガ戦では今回の課題を検証し、お客さんにより楽しんでもらえるような環境つくりをしようと心に誓った。
そして、次のトレーニングマッチの当日を迎えた。
この日も3日前と同じ午後3時半キックオフ。
ひとつ違うのが前回の試合は平日開催だったが、今回は日曜日だ。
相手も古豪ナーガFCなので、お客さんの入りもそこそこ期待できるはず。
3日ぶりにスタジアムへ行くと建物に硝子が入っており、少しずつではあるが、だいぶ「VIPルームぽく」なっていた。
しかし、その他はこのような感じで働く気はほぼないに等しい。これでは絶対、開幕戦までに間に合わない。
今回は入口とホーム側にクラブのフラッグを設置。
これが目印になり、学校やフットサル場で声をかけた人たちがホーム側(写真奥側)に来てくれた。
そして、スタジアムの外に行き、一人一人に話しかけて、ホーム側に誘導することにした。
中には、サッカーの試合が見たいというよりはタイガーFCの試合が見たくて来てくれた人もいて、観客とコミュニケーションを取れるいい機会となった。
ちなみにこれがこの日のスタジアムグルメのサトウキビジュース(約30円)。味は思っていたほど不味くはなかった。スタジアムに来たらぜひ、挑戦してみることをおすすめする。
なお、この日の審判団は3人ともしっかり遅刻せずに来て、ボールを蹴っていた。
だが、試合前に審判がボールで遊んでいる姿を見たのはこの時が初めてだ。
そして、6月21日午後3時半 キックオフ
カンボジアンタイガーFC対ナーガFC
前回と違ってこの日はそれなりに集中して試合を見ることができた。
特に木原選手兼監督の蹴ったCKからFW吉原選手のヘディングが決まった瞬間、スタンドの盛り上がりは最骨頂だった。
僕だけでなく、まわりの来てくれた観客みんなが立ち上がり、歓喜の選手たちに声援を送った。
自分のクラブがゴールするとこんなにも嬉しいものなのか、横で吉田GMや翔吾くんが本当に嬉しそうな表情をしているのを見て、僕はもっと幸せな気持ちになることができた。
この日は前回の3倍ほどの観客が集まった。
最初は静かだった観客席だったが、いいプレーが出ると徐々に歓声が沸きはじめ、雰囲気もだいぶサッカースタジアムっぽくなった。
そして、ハーフタイム、今回は観客にクラブカラーであるオレンジの紙を配り、タイガーFCにメッセージを書いてもらい、写真を撮った。これをFacebookのページにアップすることで情報を得てもらい、またスタジアムに観に来てもらえる。
行なう前はシャイなカンボジア人に大丈夫かなと思っていたが、予想以上の多くの人に書いてもらうことができた。
なお、このオレンジの紙は今も事務所の壁に大切に飾ってある。
試合は終盤に追いつかれ、1-1の引き分け、またしても初勝利はならなかった。
僕達も悔しいのだから選手たちはもっと悔しいに違いない。
この悔しさをリーグ戦にぶつけよう。
ちなみに僕ら日本人には考えられないかもしれないが、カンボジアの観客は試合後、スタンドにゴミを置きっぱなしですぐに帰ってしまう。
そんなゴミをひとつ残らずに集めて捨てるのも僕達の仕事のひとつである。
ほとんどの選手が帰った後のスタンドには、試合に出て相当疲れているはずなのに一生懸命、ゴミを拾っている木原監督の姿があった。
実はこういった目に見えないところでの作業が非常に多い。
僕は彼がチームのために協力している姿に心を打たれた。
そして本日、2015年の「メトフォンカンボジアリーグ」が開幕した。
僕達タイガーFCの開幕戦は明日。
相手はナショナル・ポリスというクラブだ。
スタジアムをにはこれまでのカンボジアリーグにはなかった新しい付加価値をつけたい。
そして、スタジアムに来てくれた観客に「来てよかった」、「また来たい」と言ってもらえるような空間を提供するためにしっかり準備をしたいと思います。
タイガーFCの試合を通して一人でも多くの人を笑顔にできたら最高です!
それでは明日、スタジアムで会いましょう!
試合詳細
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