前回の開幕戦で鮮烈なデビューを果たしたカンボジアンタイガーFC。
※開幕戦の様子はこちら→「カンボジアの希望の星となり、輝きはじめたタイガーFC ~カンボジアリーグ開幕戦カンボジアンタイガーFC vs ナショナルポリス~」
7月5日
この日は、ボンケット・アンコールFCとのアウェイ戦だった。
試合会場であるオールドスタジアムには13時に着いた。
試合開始までまだ2時間半もある。
タイガーFCの選手達は来ていたが、スタッフの姿はない。
スタッフのモイちゃんに聞いてみると僕以外の日本人スタッフは近くのレストランで昼食を取っていいるらしい。
時間があったので散策してみると、スタンドへ鉄格子の扉が開いているのを発見した。
「確認したいことがある」と勝手に理由を作って警備員に言い、中に入った。
相変わらず、カンボジアの警備はゆるい。
もちろん、スタジアムにはまだ誰もいない。
相変わらず目が開けられないほど日差しが強かったが、ターコイズブルーの空、からっとした風が妙に心地よい。
僕はこの戦いの前のスタジアムの静けさが好きだ。
去年夏にここを訪れた時はその名の通り、どこを見ても面白みに欠ける本当に古びたスタジアムという印象だった。
だが、今年は少し違うようだ。
古代オリンピックが開かれたギリシャのスタジアムのようなただ単に石を階段上に削ったであろうスタンドは赤、青、黄という色を与えられたことで、近代的な客席へと進化しているように感じる。
そして、バックスタンドの両端にそり立つ2つの煙突のようなものが、1992年バルセロナオリンピックのメイン会場で、短期間ながら中村俊輔選手が所属していたエスパニョールのかつてのホームスタジアムだったモンジュイックを思い出す。
そんなかつて旅した地を思い出しながらのんびりしていると、昼食を終えたみんながやってきた。タイガーFCの選手達が控室に入っていく。
彼らがミーティングをしている間、スタンドでビッグジャージを設置するためにアウェイ側ゴール裏へ向かう。
この設置には加藤オーナーに手伝ってもらい、設置完了。
オーナー自ら、こういった地道な作業もスタッフとともに一緒に率先してやってくれるのがタイガーFCの特徴である。
現地にいる僕達にとってオーナーのその姿勢は、いい刺激になっており、共に一からクラブを作ろうという思いが伝わってくる。
試合開始10分前、ようやくスタンドが埋まりだした。
この日は日曜、ここオールドスタジアムは市内中心部に比較的近いということもあり、多くの観客が訪れた。
どのくらいいるのか数えて見ると、約1500人前後もいる。これはワールドカップ予選効果で一般の人がサッカーに興味を持ち始めている証拠だ。
カンボジアではブラジルやスペインなどと同様、試合開始直前にならないと観客がやってこない。
こういったところも、これから試合前イベントなどを行なうことで、早めにスタジアムに来てもらい、試合以外のことも楽しんでもらえるようしていかないといけない。
吉田GMと協力し、アウェイ側にいた観客1人ずつ全員に「タイガーFCステッカー」をプレゼントし、来てくれてありがとうと挨拶をした。僕らタイガーFCは新しいクラブで認知度がない。なので、アウェイでもクラブのことを知ってもらい、興味を持ってもらうためにまずは積極的に話しかけ対話する必要があるのだ。
ステッカーをもらい、笑顔のこどもたち。
この後、彼らがスタンドの応援を先導することになるとは思いもしなかった。
「ステッカーをもっと多めにちょうだい」
子どもたちにそんな言葉を言われ、何に使うのかと思い、彼らをじっと観察してみた。
すると、なんと、集めたステッカーをこの日唯一の応援道具であるバケツ太鼓に貼る子どもたち。
一瞬、勿体無い!と思ってしまったが、実は彼らはタイガーFCの選手の弟の友達らしい。
タイガーFCを応援するためにわざわざ家からこの太鼓を持ってきたようで、彼らはなりに考えてくれていたことに感動した。
そんな小さな応援団に話しかけて、「タイガーコール」を教える加藤オーナー。
すぐに飲み込みが早く、試合中彼らだけで勝手に何度もタイガーコールをしてくれました。
こちらはタイガーガールのルーシー(右)とフローレンス(左)に囲まれて、照れているソンハーくん。
どうやら、美女の前では恥ずかしがり屋なようです。笑
そして大歓声に迎えられ、選手入場
この日はアウェイ用の黒のユニフォームで出陣!
午後3時半キックオフ
次々とボンケットの強力な攻撃陣がタイガーFCのゴールを脅かす。
だが、友廣選手を中心とするタイガーFCのディフェンス陣が体を張って寸前のところで失点を免れる。
そんなハラハラドキドキの展開に子供も大人も夢中になって観戦していた。
その頃、僕はというと、試合を横目で見ながら強風で剥がれたビッグジャージを修正しにゴール裏へ向かった。
ピッチ横を歩いたが、立っているだけでも汗が噴き出てくる。
この暑さの中、90分間戦っている選手たちは本当にすごい。
この我慢の時間帯をなんとか耐え凌いで後半へと思っていたが、ついに失点してしまう。
失点するまでは、ずっと気持ちが張りっぱなしでずっと落ち着かなかった。
野球でいうノーヒットノーランの時のような緊張感である。
しかし、失点してしまったことで、勝つため、勝点を取るためにはためには得点が必要だと明確になったことで、見ている側としては何か心理的に少し楽になれた。
スコアレスの時よりも応援する声に、より熱がこもる。
だが、試合はそのまま0-1でハーフタイムを迎えた。
ハーフタイムになると、タイガーガール、ソンハーくんの出番だ。
アウェイ側スタンドをまわり、観客と交流し、写真撮影などに応える。
カンボジア人の男性はシャイなので目の前に美女がいても、なかなか写真を撮ってとは言えないようで遠くから眺めるだけだった。
今後、もっと交流できそうなイベントを考えなくてはいけない。
一方のソンハーくんは子どもたちを中心に大人気だった。
子どもたちに太鼓の叩き方を教えてもらうソンハーくん。
常に子どもたちに囲まれ、しっぽを掴まれたり、パンチされたりと、半ばいじめ状態に陥っていた。笑
だが、「これで子どもたちが喜んでくれるなら僕は嬉しい」と、試合後の控室で泥だらけになりながらもソンハーくんは嬉しそうに言っていた。
本人がそういうのなら僕らは止めない。笑
そして後半が始まった。
だが、あの男にやられてしまった。
彼の名は「ワタナカ」
そう、現在のカンボジア代表の試合で途中出場ながらよくゴールを決め、もはや国民的アイドルのような選手である。(白11番)
彼がボンケットの2点目を決めた瞬間、ホーム側のスタンドは総立ちで大歓声だった。
目の前でそんな光景を見せつけられ、本当に悔しかった。
タイガーFCは、大黒柱である木原選手兼監督がピッチへ。
すぐさま、PKを得て、自ら決めて1-2。
1点差になった。
得点を決めて、加藤オーナーに握手を求めてる観客たち。まだ同点に追いついていないぞ!
これはいける!
そんな雰囲気つかの間、直後に完璧に崩されて、失点。
1-3
再び、盛り上がっているホーム側が視界に入る。
正直、ものすごく気分が悪い。
タイガーFCのキックオフで試合再開。
だが、ここがこの日一番盛り上がった瞬間だった。
キックオフ直後からパスを繋ぎ、1度も取られずにゴール前へ
カメルーン人MFプライバットのパスを受けたタイガーFCの10番ヴィラックがDFをするするとかわし、シュート。
ボールはゴールへ吸い込まれた。
2-3
再び、1点差になった。
喜んで子どもたちはじめ、観客とハイタッチする加藤オーナー。
この時のスタンドの盛り上がりようは、ホーム側をも上回っていた。
みんな、笑顔でタイガーFCを応援してくれた。
残り時間はまだある。
子どもたちから再び「タイガーコール」が沸き起こる。
しかし、試合はそのままタイムアップ。
ボンケット・アンコールFC 3-2 カンボジアンタイガーFC
惜しくもタイガーFCは敗れてしまった。
選手一人一人に声をかける加藤オーナー。本当に悔しい敗戦だったが、連戦続きなので切り替えが大事だと言っていた。
試合のハイライトはこちら→<メトフォンカンボジアリーグ2015第2節ボンケット・アンコールFC 3-2 カンボジアンタイガーFCハイライト>
強豪相手に善戦したものの、今季初黒星をきっしたタイガーFC。
しかし、この日は、アウェイながら諦めない姿勢を見せてくれた。
選手たちのその姿はきっと観客の心を掴んだに違いない。
また、試合後、見に来てくれた観客に「楽しかった!次もまた見に来る!」と言ってもらえて嬉しかった。
そして、スタンドからタイガーコールが沸き起こり、盛り上がったのはこの子どもたちのおかげだ。
木原選手兼監督と記念撮影し、満足そうに帰っていった。
そして今夜、決戦です!
第3節
昨年の王者プノンペン・クラウンFCと対戦します!
現地時間18時キックオフ (日本時間20時)
7月はアウェイ戦続きのタイガーFCですが、勢いに乗るためになんとか王者を打ち負かしてほしい!
クラウンのホームで試合なので、現地の方はこの地図を参考にスタジアムへ。
また、この試合はカンボジア国内のテレビで生放送される模様なので、勝てば、ファンを増やすチャンス!
また、日本国内でもこの後、21時から応援番組「ぶっちゃけ★タイガー」内で試合速報しますので、是非ご覧になってください。
番組はこちらから視聴できます!
↓ http://sp.ch.nicovideo.jp/cambodian-tiger
ぜひ、ご覧ください!
photo by Emi Wakui
<2015カンボジアリーグ>
第1節:「カンボジアの希望の星となり、輝きはじめたタイガーFC ~カンボジアリーグ開幕戦カンボジアンタイガーFC vs ナショナルポリス~」
<カンボジア関連まとめ一覧>
・【カンボジアサッカーまとめ】カンボジアのサッカーとは?
・2014年7月 5年ぶりにプノンペンへ
・2014年7月カンボジアリーグ観戦記アルビレックス新潟プノンペンFC編
・2014年7月カンボジアリーグ現地観戦記トライアジア・プノンペンFC編
<タイガーFC関連>
・【これって電波少年の企画!?あまりにも衝撃的なサッカークラブのお話】
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・【現地映像あり】ロシアW杯アジア1次予選 カンボジアvsマカオ 1stレグ
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