2015年9月3日

この日は、僕の人生において忘れられない日となった。 


僕達の母国・日本で「ロシアワールドカップアジア2次予選 日本代表vsカンボジア代表」 が行われたのだ。

そんな思い出の1日を振り返ってみたいと思います。



試合会場である埼玉スタジアムには、14時過ぎに到着。

「最近、日本代表の調子が良くない」という話はネットや友人を通して聞いていた。

この日も相手がFIFAランキング180位のカンボジア代表だけにあまり人が集まらないのではないかと少々心配していた。

だが、青ブルーのユニフォームをまとった多くのサポーターが列を作り、屋台飯を堪能したり、売店でグッズを購入したり、笑顔で談笑しながら開門を今か今かと待ちわびている。

いつもと何ら変わらない光景に少しほっとした。
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僕らに遅れること1時間ほどでカンボジアンタイガーFCのマスコット・ソンハーくんも到着。
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お父ちゃんである愛媛FCの非公認マスコットであるカエルの一平くんと共にサポーターと交流開始。普段見慣れない虎が隣にいるとざわついているのを確認。
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一平くんの場合、多くのサポーターに認知されているのでそりなりに人が集まってくるが、ソンハーくんは日本ではまだあまり知られていないのでどうなることかと我々サポート・スタッフは心配していました。 


しかし、いざ現地へ行ってみると背中のカンボジアの国旗をみて、カンボジア代表の公式マスコットと思い、ハイタッチをしたり、写真を頼まれたりと人気虎になった。
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なかには「カンボジアンタイガー」や「twitterフォローしてます!」と言われたり、限定Tシャツを持ってきてサインを求められることもあった。
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 特に蒸し暑い日本の気候を心配して、ブドウ糖や塩のど飴などを差し入れしてくれるファンの方々もいてくれて、これは絶対カンボジアではありえないことなのでソンハーくんも大喜び。さらには調子に乗って、スターの気分に浸っているようでした。 皆さん、虎が本当にお世話になりました。








キックオフ1時間前、加藤オーナーやForwardの皆さんと合流し、いよいよスタジアム内へ。

この「カンボジアエリア」と書かれた紙を見ただけでテンションが上がる。

あのカンボジア代表が本当に日本にやってきたのだ。
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これまで僕は、ここ埼玉スタジアム含め、世界中のスタジアムで日本代表戦を応援してきた。

当たり前だが、日本代表を敵に回してアウェイ側で見るのは今回が初めてである。

試合前は、日本代表に対してもっと複雑な気持ちになるのかと思っていたが、いざアウェイ側に入ってみるとカンボジアの国旗と同じ赤と青のユニフォームを着ている人たちの姿が目に入ってきて胸が熱くなった。
僕の心は決まった。
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アンコール遺跡群の中にある寺院跡バイヨン。その中にある「クメールの微笑み」と呼ばれている顔が、カンボジアサッカー協会のロゴである。10年前、初めてカンボジアを訪れ、このロゴを見つけた時は「なんて神秘的なロゴなんだ!」と思ったのを憶えている。そして当時、これを知っているのはひょっとしたら日本人で僕くらいしかいないだろうと世紀の大発見をしたような気分だった。それだけにこれが大型スクリーンに表示された時は、なんとも感慨深いものがあった。
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さて、このアウェイ側には多くのカンボジア人サポーターがいた。彼らは僕が思っていた以上にカンボジア代表のユニフォーム(それも最新作)を着ている人が多く、さらに選手の名前も詳しく、誰も知らないだろうと思いんでいた僕は面食らった。
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木製の太鼓を中心に彼らが持ってきた伝統楽器が繰り出す音が僕らの心に刺激を与える。ここはアウェイ側なのだ。
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吉田GMが掲げているこのゲーフラには「カンボジアはアジアの盟主たい」の文字。カンボジアがいつか胸を張ってそう言える時が来ることを僕らは願っている。
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カンボジアの選手たちが目の間でウォーミングアップをしていた。その中でも一番人気はやはり背番号11番ワタナカ選手。
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選手紹介の時も人一倍、歓声が大きく、彼に対しての期待を感じた。
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また、観客席にもワタナカ選手を応援する段幕が一番多かった。
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こちらは友人である国際武道大の学生と先生が作成した段幕。クメール語で書かれており、他のものと比べてもダントツでクオリティが高かった。今度はタイガーFCにも作ってもらいたい。
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そして、印象に残ったのはカンボジア人達が日本代表選手紹介の時にも一人ひとり拍手していたこと。たしかに力の差はあり、現在住んでいる日本だからかもしれないが、彼らの相手をリスペクトをする姿勢が素晴らしかった。
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そしていよいよ、その時間がきた。


FIFAアンセムが流れ、選手入場。



スタジアムを埋め尽くしたほとんどは日本人。時折、選手たちに対する歓声が聞こえてくる。カンボジア代表の選手達にとって、こんな素晴らしい雰囲気の中で試合をするのはおそらく経験したことがないだろう。彼らの心境が気になった。
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カンボジア国歌斉唱。


僕は、これまで何度かカンボジアの国歌は聞いたことはあるが、歌詞やメロディーは覚えていない。

しかし、この時聞いたカンボジア国歌は実に美しく、これから待ちに待った祭典が始まるという興奮と、こんな気持はもう二度と経験できないだろうという儚い気持ちの両方を僕に与えてくれた。



ついほんの十数年ほど前まで内戦や地雷に苦しめられた過去を持つカンボジア。(地雷は現在も多く残っている)

サッカーも国際試合など行える環境ではなく、ワールドカップ予選にも参戦したのは1998年からである。

僕が初めてカンボジアを訪れた2005年はもちろんのこと、ここ最近まではスタジアムに閑古鳥が鳴いているような状況だった。

しかし、今年3月の代表チームの躍進が後押しし、サッカーは国内でNo.1のスポーツになった。

僕が関わっている国内リーグのほうは成長はしているものの、まだまだ課題は多いのが現状である。


そんなカンボジア代表チームが、我らが誇る日本代表を相手にこれから戦うというのだ。

昔、シェムリアップの荒れ地でサッカーをしながら思い描いていた夢がこんなにも早く実現するとは思わなかった。



国歌斉唱を聞いた瞬間、久しぶりに武者震いがした。

そして、涙が止まらなかった。

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目の前で本田圭佑選手や香川真司選手など日本が誇るスター選手を前に必死に守りを固めて対抗するカンボジア代表の選手たち。そんな彼らの姿を追いながら時計をチェックし、「10分無失点」、「さらに15分無失点!」とこの場にいたサポーターと小刻みに喜びを分かちあった。
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結局、前半分の失点で止まってしまったが、その後もGKヤティを中心に体を張ったディフェンスで最後の最後で失点を回避することに成功。前半を最小得点差で迎えることができた。
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ちょっと紹介するがこの日、カンボジア側にいたカンボジア人達の応援は本当に素晴らしかった。

鉄製のシンバルや太鼓を駆使し、何度も「カンボジアコール」をするだけでなく、後半は次々と自国の有名な歌らしき歌を歌って、選手と同じく、最後まで集中は続いた。これが母国での試合となると、味方も多くてなかなかうまくいかない。彼らにアドバイスするとしたらタイガーFCの時の僕のように誰か応援をコントロールするリーダーの存在が必要だ。
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結局、試合は0-3で日本代表が勝利。

日本代表にとっては不本意な内容だったかもしれない。しかし、しっかりと勝利することが重要だったのでとりあえずは一安心である。
もし、ここでつまずいてワールドカップに出場できなくなったらいろんな意味で困るのでとりあえず、ほっとした。

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そして、カンボジア代表だが、0-3と戦前の予想をはるかに上回る得点差で終えることができた。

たしかに彼らのプレーを見ていると、守備一辺倒でファイティングスピリットが足りないなど意見は出ていたが、僕はこれはこれで良かったと思う。



カンボジアはこれで0勝3敗となり、既に2次予選での敗退が濃厚。

たしかに見ている側、カンボジアサッカーに関わっている側とすれば、失点をおそれずに果敢にチャレンジして少しでもインパクトを残してほしかったという気持ちも多少はある。

だが、アウェイで実力国相手にこの得点差で終えることができたのは彼らにとって大きな自信となったはず。

この日のこの経験が、彼らの今後のサッカー人生、そしてカンボジアサッカー界に与える影響は計り知れなiい。

今後、カンボジアが国内でのサッカー人気が継続し、さらに進化していく上でこの戦い方は必要だった、間違っていなかったと言われるためには今後の僕達も努力をしていかなければいけないと感じた試合だった。
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そしてこの日アウェイ側にいたカンボジア応援団の皆さん、お疲れ様でした。

これまで日本に住んでいるカンボジア人はごく少数でなかなか交流がないと思っていましたが、やはり「決戦」となると、こんなにも多くの人が集まるものなんですね。

200人以上のカンボジアサポーターが集まったことに大感動でした。
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僕達カンボジアンタイガーFCも今後、サッカーはじめ、カンボジア関連のイベントなどを日本国内外でしていきたいと思います。

そして、サッカーを通してカンボジアの子供たちに夢や希望を与えるためには何が必要なのかを追求し、実行していきます。


こんなに素晴らしい人柄の人がたくさんいるカンボジアという国をもっと多くの人に知ってもらいたい。

そして、良いところも悪いところも含めてカンボジアを好きになってもらえたら幸いです。


みんなでカンボジアを盛り上げて行きましょう!

お疲れ様でした!