昨日は今年初めてのサッカー観戦だった。

去年は正月にバレンシアvsレアルマドリードとアンダルシアダービー(ベティスvsセビージャ)をセットで観戦したが、今年は30日目にして初観戦。実に12月にベトナムで見た試合以来、約2ヶ月ぶり。こんなにも観戦しなかったのはいつ以来だろうか。

昨日見たのは、
AFCカップ2017プレーオフ第1戦プノンペン・クラウンvsホーム・ユナイテッド

現在、アジアではACLに続く、2番目の大会として認知されているAFCカップ。(欧州でいうヨーロッパリーグのような位置づけ)以前、アジアのクラブの大会はACL、AFCカップ、プレジデンツカップという3つに分かれていた。2015年からプレジデンツカップが廃止され、アジアクラブランキング順に2つ大会に分かれて行われるようになった。

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2017年からAFCカップは、グループリーグを西アジア・中央アジア・南アジア・東南アジア・東アジアの各地区に分かれて行なう。過去2シーズンは毎回大会方式を変更されるなど、まだそのスタイルが確立されていないのが現状だ。

カンボジアはというと、当初は与えられていたのは0.5枠のみ。昨年8月、モンゴルで行われた予選でナガ・ワールドFC(※2015年2位)が参加し、1分1敗で敗退した。これでもう2017年のAFCカップ出場はなくなったと思っていたが、昨年12月にプノンペン・クラウンFC(2015年優勝)とボンケット・アンコールFC(2016年優勝)のプレーオフからの出場が急遽決まった。(枠が空いたのは他国が参加辞退や基準を満たしていないなど様々な理由でらしい)

<AFCカップ2017東南アジア地区プレーオフ日程>

1/30 プノンペン・クラウンFC vsホーム・ユナイテッド
2/7 ホーム・ユナイテッドvsプノンペン・クラウンFC

1/31 ボンケット・アンコールFC vs ラオトヨタ
2/7 ラオトヨタvsボンケット・アンコールFC

そして昨日、実に昨年の7月以来、久しぶりにクラウンのホーム・RSNスタジアムへ。

今季のクラウンは昨年までと違い、元アルビレックス新潟プノンペンGMの池田憲昭氏がGMに就任し、監督もウクライナ人に変わり、新たにMFウクライナ人選手に加え、、FW中村風太、DF小菅千春の日本人選手を獲得し、「日本人選手を獲得しない」というこれまでのイメージが一変した。
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また、クラウンはカンボジアでNo.1の施設を持つ金満クラブとして有名。だが、そのクラウンですらこれまではグッズが多少ある程度で、屋台もほんの少ししかなかった。
ところが昨日行ってみるといくつかクラブ公認?の屋台が出ていた。
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以前までの屋台側が勝手に出している感じがない。日本でサッカー観戦の醍醐味といえるもののひとつに屋台がある。これが充実しているとしていないとでは観客のテンションがだいぶ違ってくる。この日のRSNスタジアムはもうJFLかJ3程の規模に達していた。運営に日本人が入るとここまで変わってくるのか。急速に国際基準に近づいている感じがしてワクワクしてきた。

また、以前はピッチ脇には観客が自由に出入りできて試合をする側としてはハラハラしていたが、この日はピッチと観客席の間にしっかりと金網ができていた。今後もこのようにカンボジアリーグの中でクラウンが先導して様々な実績を作っていってほしい。
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肝心の試合が始まった。今回はかつてセレソ大阪やシンガポールリーグでもプレー経験のある荻野賢次郎選手(現AEU)に解説してもらいながら観戦。タイでもプレー経験のあるホーム・ユナイテッドのGKを絶賛していた。(たしかにキックが尋常なく上手だった)
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シンガポールリーグ4位のホーム・ユナイテッドが有利に試合を進める。かつて元岐阜や長崎でプレーしていたクロアチア人FWスティッポ、2012年にナイキのThe Chance' competitionという世界の若手有望の52選手に選ばれたMFファリス・ラムリを中心に次々とクラウンに襲いかかる。

対するクラウンも昨年は開幕戦でハットトリックを記録したものの、怪我をし、シーズンを棒に振った南アフリカ人WGボーイセンを中心に果敢にゴールに迫るもあと一歩のところで得点には至らず。
両者一歩も譲らない戦いが続いたが、前半35分にPKでホーム・ユナイテッドに先制を許してしまう。すると、その1分後にも追加点を奪われ、0-2。(得点者は2点ともファリス・ラムリ)
それまで内容は良かったものの、一瞬の好きを突かれ、ホームで2点を先行され、厳しい展開になってしまった。
だが前半ロスタイム、ホームチームの得点にそれまで葬式のような雰囲気だった観客席は一気に生き返った。左サイドでボールを持ったボーイセンからのクロスを中村風太が頭で押し込み、1-2。1点差でハーフタイムを迎えることができた。
【中村風太選手得点シーン】



ハーフタイム、小腹が空いたので屋台に買いに行ったが、サポーター達の表情は希望に満ち溢れていた。彼らを見ていると、2年前にブラジルW杯コロンビア戦のハーフタイムで見た日本サポーターの笑顔を思い出した。この時は前半終了間際に本田圭佑のクロスから岡崎慎司のヘッドで同点に追いつくというスコアは違うもこの日と全く同じような展開。この時、この瞬間の雰囲気はスタジアムでしか味わうことができない。やはりサッカーは現地で観戦してなんぼである。
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後半は同点ゴールを狙うクラウンペースで進み、手に汗握る緊迫した時間帯が続く。
ところが、同23分にミスから失点してしまい、1-3。再び2点差になり、アウェイゴールを3点も奪われたということもあり、さすがにきついだろう。そういう絶望感がスタジアムに漂う。ちらほらまわりの観客も帰り始めた。

だが、彼らの帰路につく足を止めたのは途中出場のカンボジア代表MFソクゴンだった。ペナルティエリア外で左サイドからグラウンダーのパスを受け、そのままダイレクトで右足を一閃。放たれた暖冬は美しい孤を描いて、ゴールを吸い込まれた。まるで元イングランド代表MFスティーブン・ジェラードを彷彿とさせる得点だった。

この瞬間、帰り始めた観客の足は止まり、その場で立ち上がり熱狂。再び1点差になり、スタジアムのボルテージは最骨頂に達した。もうこれは追いつくことも可能かもしれない。

と思った瞬間、ミスから4点目を取られてしまい、ジ・エンド。

時計はもう後半43分。僕達も試合後の混雑を避けるべく、出口へ向かった。健闘はしたが、国際舞台での経験不足が出た感じとなった。
駐輪場でバイクを出そうとしていると歓声が聞こえた。携帯で試合結果を見てみると、1点返して、最終スコアは3-4。
どうやらボーイセンが決めたようだ。
選手達はまだ諦めていなかった。

結果的にアウェイゴールを4点も奪われたのは非常に痛いが、スコアは1点差。
来週行われる2ndレグに向けて非常に価値のある1点を奪った。



来週に希望を持つことができて一安心したと同時に最後まで見届けれなかったことで少し申し訳ない気持ちになった。

これまで自分の中でクラウンは仕事上、敵として見ており、レアルマドリードやバルセロナのようなイメージを持っていた。だが、今はカンボジアのサッカーの新しい歴史を作るために応援している。カンボジアを代表して頑張ってほしい。
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そして今夜、もう一つのカンボジア代表ボンケットが試合を行なう。
ボンケット、ラオトヨタ両チームにも知り合いがいて、昨年共に戦った仲間も在籍している。

彼らにとってはこれがワールドカップ以上に意味の持つ試合になるに違いない。
この試合で人生が変わるかもしれない。

どんな戦いを見せてくれるのか、今から楽しみである。